散れども切れぬ備忘録

代数学やその他数学に関することなどをそこはかとなく書きつくる備忘録

アドカレ「反例」(#超越数はクソ)

《この記事はアドベントカレンダー「反例」(→https://adventar.org/calendars/3732 )の16日目の記事です》

アドカレ「反例」ということで、超越数論に関する反例をどしどし紹介していきます、ぶな。

反例を挙げていく前に、少し準備をしておきます。

[補題1]
代数的数全体の集合は体を成します。

[証明]
こちら↓のブログで証明を紹介しています。
zangiri.hatenablog.jp


[系1]
代数的数(勿論0を除く)と超越数の和・積は超越数です。

[証明]
補題1から背理法を使ってすぐに示せますので略します。

[補題2]
代数的数の有理数乗は代数的数です。

[証明]
「容易に示せるので読者への演習問題とする。」

[系2]
超越数有理数(勿論0を除く)乗は超越数です。

[証明]
こちらも補題2から背理法よりすぐに示せますので略します。

以下の補題達は、証明はせず、事実として認めることにします。

[補題3-1]
自然対数の底eは超越数です。
[補題3-2]
(0でない)代数的数aに対し、e^a超越数です。
[補題3-3]
以下 自然対数を\mathrm{ln}で表すことにします。
(0,1でない)代数的数aに対し、\mathrm{ln}a超越数です。(\log_a e=(\mathrm{ln}a)^{-1}より\log_a e超越数になります。)
[補題3-4]
a,bを0,1でない代数的数、cを代数的無理数とします。
このときa^c超越数です。
また、\log_a b有理数でなければ超越数です。
[補題3-5]
円周率πは超越数です。

以上で準備が完了しましたので反例を挙げていきます。なお、補題についてはどのタイミングで使うのかとかどれを使うのかとかは一々言いません。(察してください←)


以下α,β,γを超越数とします。

[命題1]
α+βは超越数です。

例1-1)e+e=2eは超越数です。
例1-2)\mathrm{ln}2+\mathrm{ln}3=\mathrm{ln}6超越数です。

反例1-1)e+(-e)=0は超越数ではありません。
反例1-2)\mathrm{ln}2+\mathrm{ln}\frac{1}{2}=0超越数ではありません。

[命題2]
αβは超越数です。

例2-1)e・e=e^2超越数です。
例2-2)\mathrm{ln}2・\log_2 3=\mathrm{ln}3超越数です。

反例2-1)e・e^{-1}=1超越数ではありません。
反例2-2)\mathrm{ln}2・\log_2 e=1超越数論ではありません。

[命題3]
α^β超越数です。

例3-1)e^π超越数です。
例3-2)e^{-\frac{π}{2}}=i^i超越数です。

反例3-1)e^{2iπ}=1超越数ではありません。
反例3-2)e^{\mathrm{ln}2}=2超越数ではありません。


以上で反例挙げを終わります。これらの他にもα^{β^γ}超越数になったりならなかったりします。
超越数、どんな演算もできないなんてなかなかク〇ですね…。まぁ〇ソだからこそ楽しいみたいなところもあるんですけどね。ということで、超越数論に興味があれば、私の他のブログやネットの海に漂うpdf等、色々調べてみてください。ここまでご覧頂き有難うございました。