散れども切れぬ備忘録

代数学やその他数学に関することなどをそこはかとなく書きつくる備忘録

メモ6(中心のモノイド性)

2月半ばに考えて2.20に解決した問題のメモ・解説です。
問題は「モノイダル圏のモノイド対象の中心はまたモノイド対象となるか?なるなら可換なのか?」です。
ネタバレしておくと、肯定的に解決できました。





以下Vを(完備な)モノイダル圏とし、Aをそのモノイド対象とする。

Z∈Vが以下を満たすとき、これをAの中心と呼びZ(A)と表すのであった。*1:
Vの射i\colon Z→Aがある。
iは任意のa∈A,z∈Zに対してa*i(z)=i(z)*aを満たす。*2
X∈Vと射f\colon X→Aがあり、これらが②を満たすとき、射φ\colon X→Zが一意に存在してiφ=fを満たす。

また、この中心Z(A)Z(A)=∫_{*∈\mathbb{B}A}Hom_{\mathbb{B}A}(*,*)としても構成できるのであった。
ここに\mathbb{B}AとはAのdeloopingと呼ばれるV-豊穣圏であり、
・対象は1つのみ(であり*と表される)
・射集合はAであり、射の合成はモノイドの乗法で定める
と定義される。

さらに「中心」はVが完備ならいつでも存在するのだから、結局「完備モノイダル圏Vのモノイド対象Aに対して その中心Z(A)が存在して これはVの対象であり∫_{*\in \mathbb{B}A}\mathbb{B}A(*,*)として構成される」ということが言える。

ここまではメモ2の復習であるが、ここからメモ3の内容を混じえることで主題の結果を得る。

メモ3*3に拠れば、
V-豊穣圏Cの対象Xに対して
End_C(X)Vのモノイド対象になるのであった。
ここで、End_{[\mathbb{B}A,\mathbb{B}A]}(Id_{\mathbb{B}A})を考えると、
これは∫_{*\in \mathbb{B}A}\mathbb{B}A(*,*)となり、
結局Z(A)に一致し、またVのモノイド対象でなることもわかる。
また、中心の可換性から 中心は可換モノイド対象になることもわかる。

例1)
環の中心は環であり、特に可換環である。
中心に備わっている射iは大体包含と思えるから、環の中心は可換な部分環になるとも言える。

例2)
モノイダル圏の中心はモノイダル圏であり、特にVがBraidedであればBraided モノイダル圏になる。

*1: https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2021/01/31/232549 を見よ

*2: これはちょっとInformalで、より正確にはtwisttに対して[tex:m_A(id_A⊗i)=m_A(t(id_A⊗i) )などと書くべきである。

*3: https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2021/02/01/095156 を見よ。