メモ9(になるはずの下書き)
メモです。
散切が予てより予想している「モノイドの圏と加群の圏の圏は反変圏同値」という定理の前加法圏ベースの証明を与える……ブログ記事になるはずですが、完成する目処があまりにも立たないので、一旦下書きと称して途中までを公開します。
したがって、公開されたり非公開になったり…を繰り返す可能性があることに留意してください。
環と加群、およびそれらの成す圏
前加法圏とは、圏であって、そのホム集合がアーベル群であり、射の合成に対して双線形なものをいう。
これは、アーベル群の成す圏をAbと書けば、Abー豊穣圏とおなじことである。
ただ一つの対象から成る圏を一点圏と呼ぶ。
一点前加法圏を単位的環、或いは単に環と呼ぶ(ここでは環と呼ぶことにする)。
射の合成が環の乗法に、恒等射が単位元に、合成の双線形性が分配法則に対応する。
環(一点前加法圏)のホム集合がと表されるとき、その環を
と表し、その唯一の対象を
或いは単に
と表す。
を前加法圏、
を関手とする。
が前加法関手であるとは、
の各対象
に対して、写像
がアーベル群準同型であることをいう。
環と前加法関手の成す圏をと表す。*1
の射を環準同型という。
前加法関手を左
加群、或いは単に
加群と呼ぶ。
をR‐加群とする。
このとき、がMの台集合に対応し、
アーベル群準同型が構造射
に対応する。
R‐加群を正則R‐加群或いは単に正則加群と呼ぶ。
正則加群の構造射のアンカリー化
はRの乗法に一致する。*2
を前加法圏とし、
を前加法関手とする。
前加法関手間の自然変換を前加法自然変換と呼ぶ。
前加法自然変換はただの前加法関手間の自然変換であるから、単に自然変換と呼ぶこともある。
前加法自然変換には和が定義できる:
前加法自然変換に対して、
点毎に和を定めとすればよい。
前加法自然変換の和はまた前加法自然変換になり、
さらに前加法自然変換全体の集合
はアーベル群となる。
アーベル群の和は自然変換の(垂直)合成に対して双線型であり、よって関手圏
は前加法圏となる。
このような関手圏を前加法関手圏と呼び、或いは
と表す。
をR‐加群とする。
自然変換をR‐加群準同型と呼ぶ。
その唯一の成分はアーベル群準同型であり、
これは自然変換の定義からを取ると
となる。
R‐加群とR-加群準同型の成す圏をと表す。(
である。)
は自然変換の和を成分毎の和で定めれば前加法圏となる。
関手を
と定めると、これは前加法関手になる。
この前加法関手を忘却関手と呼ぶ。
今後、単に加群の圏と言えば、組を指すものとし、
についてはR-加群の”成す”圏と呼び、これを区別する。
加群の圏の圏を以下のように定義する:
その対象は加群の圏であり、
その射は前加法関手であり、
忘却関手と可換である(を満たす)ものとする。*3
この記事では、冒頭に述べたように、環の圏と加群の圏の圏が反変圏同値であることを示すことを目標とする。
前加法圏における米田の補題
これからの準備として米田の補題の前加法圏版を証明しておく。
ただし、ここでは米田の補題(を含む、一般的な圏論)は既知とし、必要に応じて前加法性だけを確かめるものとする。
まずホム関手を定義する。
前加法圏とその対象
に対して、前加法関手
を以下のように定義する:
対象:各に対して
射:各Cの射に対して
とする。
ただし、各Cの射に対して
このようにして定めた前加法関手を前加法ホム関手或いは単にホム関手と呼び、
と表す。
或る前加法関手が或る
を以て
となるとき、
前加法関手Fは(aで)表現可能であるといい、斯様なaをFの表現対象という。
さて、前加法圏における米田の補題は次のようになる:
前加法圏Cとその対象と前加法関手
に対して、以下の同型が自然に成り立つ:
ただし、は圏Abにおける同型、すなわちアーベル群としての同型を表す。
[略証]
まず、同型を構成する:
自然変換に対して、
とし、
に対して、
とする。
これらが互いに逆になる(したがって同型になる)ことは計算すれば分かる*4。
次にこれらがアーベル群準同型になるか、つまり加法性を持つか確かめる。
と言っても、前加法自然変換の和は点毎の和であること、アーベル群準同型の和は点毎の和であること、がアーベル群準同型であることなどから、計算すればすぐに分かる。
□
淡中の補題
ここで、今後有用となる定理を1つ紹介しておく。
この定理(或いはこの定理に同値な命題)は「淡中の補題」と呼ばれるが、これは基本的にはこのブログ記事内のみでの呼称であることに留意されたい。
[定理](淡中の補題)
忘却関手は正則加群で表現可能である。
すなわち、
自然な同型
および
アーベル群としての同型
が成り立つ。
[略証]
前加法米田からただちに従う。
□
淡中再構成
もう1つ有用な定理を示しておく。
こちらは先の補題とは違い、世界的にも淡中再構成定理(Tannaka Reconstruction Theorem)と呼ばれている(定理群のうち、最も簡単な)ものである。
以下に証明を記すが、実質的に過去の記事*5と内容が被るので、ここでは略証を記すに留める。
[定理](淡中再構成)
環としての同型
が成り立つ。
[略証]
まずアーベル群としての同型を示す。
淡中の補題と米田の補題から、
となり、これらの同型は全てアーベル群としての同型だからよい。
元を取りこの同型を辿れば乗法も上手く定まることが分かる*6。
よって環としても同型になる。
□
淡中随伴
ここからの内容はメモ8( https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2021/05/15/003551 )と被るが、この後に必要となるため、また内容が少しズレている*7ため、ブラッシュアップも兼ねてここに書き直す。
まず、反変随伴の復習をする。
ここまで2026.01.09の更新。
関手の構成
自然変換の構成
随伴性
余単位は同型⇒右随伴は充満忠実
示唆と実証
主定理
『環の圏と加群の圏の圏は反変圏同値』
なぜ加群なのか
この先にある概念と定理
それらが示唆するもの、もたらすもの
さらに先へ(みんなが知っていること、知らないこと)
(『』の内容と項目のみの部分については近日加筆予定)
*1:Ringは前加法圏ではない。零環から零環以外への環準同型は存在せず、したがってそのようなホム集合は常に空であり、群になることはない。
*2:逆に、乗法(のアンカリー化)が構造射を定めるような加群を正則加群として定義することも多い。
*3:これは、前加法圏の成す圏をと書くことにすれば、
を
の
上のスライス圏
の充満部分圏であり加群の成す圏からなるもの として定義するのと同じことである。
*5: 前加法圏ベースではなく、モノイダル圏とその上のモノイド対象・加群対象をベースにしているが、ほぼ同じ証明となる。 https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2020/09/22/234153#%E7%92%B0%E3%81%AE%E6%B7%A1%E4%B8%AD%E5%86%8D%E6%A7%8B%E6%88%90
*6:実際に元を取り、同型を式の下から追ってみる。最下段から1つ上段に行くと”rを右から掛ける加群準同型
”=r倍作用となる。さらに上段に行くと”r倍作用を右から合成する操作
が成分になるような自然変換”となる。この逆は、米田の補題から
を2回繰り返せばよい。これによって乗法が定まり、準同型やその合成はすべて双線型だから、件の同型は環同型になる。
*7:メモ8はV豊穣圏がベースだが、この記事は前加法圏ベースである。また、"加群の圏の圏"と呼ぶべき圏についても条件・内容が異なる。
メモ8(淡中随伴)
メモです。
2020年10月あたりから考え始めて、2021年5/12に解決した、淡中随伴の証明をします。
(2025年3月 加筆・修正)
まえがき
淡中随伴とは、大雑把に言えば
圏MonVと圏V-Cat/Vの間に 関手Endと関手tanがあり、またこれらによる反変随伴がある
という定理である。
淡中双対と呼ばれる「モノイドの持つ対称性は、その加群の圏に(全体的に分散されながら)遺伝する」「加群の圏の持つ対称性は係数モノイドの対称性に復元される」という定理があるが、淡中随伴はこの「遺伝・復元」する操作を与えると考えられる。
淡中随伴には共変なものと反変なものがあり、コエンドを用いた共変なものがよく知られているが、今回はエンドを用いた反変淡中随伴を証明する。
反変随伴
まず、反変関手の随伴を復習しておく。
反変随伴はただの反変関手間の随伴であるが、定義が紛らわしいと感じたのでここにまとめておく。
[定義]
を圏とする。
関手を
から
への反変関手と呼ぶ。
さて、先述した通り、反変関手間の随伴が反変随伴である。ここでは単位・余単位を用いた三角等式で随伴を定義する。
[定義]
を圏とし、
を関手とする。
単位と呼ばれる自然変換と
余単位と呼ばれる自然変換があり、
これらが以下の等式を満たすとき、組或いは単に組
は 随伴 であるという*1:
任意の対象に対して
①
②
これは以下の条件と同値である:
任意の対象に対して
同型
がについて自然に成り立つ。
この同型は具体的には以下のように与えられる:
を
に写し、
を
に写す。
淡中随伴
準備
ここからは淡中随伴の証明に必要な準備をし、また実際に示すことを目標とする。
以下、を完備なモノイダル閉圏とする。
関手の構成
次に、関手を構成する。
を次のように定める:
対象を
に写す。(
から
への
関手の成す
豊穣圏を
と書く。)これはメモ3*5の議論より
のモノイド対象であるから、
の対象になる。
また、射を
に写す。これは具体的には
で与えられる。より詳細には、
を
に写すが、これは
なので結局
となる。これは
の射になる。
こうして得られた関手をエンド構成と呼ぶことがある。
また、関手は加群の係数制限によって与えられる。すなわち、
対象をその上の加群の圏*6と忘却関手*7の組
に写し、
射を係数制限
に写す。これはより詳細には
と
によって与えられる。
こうして得られた関手を淡中構成と呼ぶことがある。
単位の構成
さて、最後の準備として、淡中随伴の単位・余単位になる(はずの)自然変換を構成しよう。
まず、単位はだが、具体的には
で与えられる。
これがの射としてWell-definedであることを示したいので、より詳細に見ていく。
些か天下り的ではあるが、とし、
を
と定める。
このとき、はモノイド準同型だから
は
-加群であり*8、
も成り立つので、
に対してはWell-definedである。
また、の射
に対しても、
とすればよい。
実際、任意のに対して
が自然変換であることから
を満たし、よって加群準同型だからWell-definedである。
以上のことから、は
の射としてWell-definedである。
また、この単位が自然変換になることを示さなければならない。そのためには、
の任意の射
に対して
(☆)が成り立つことを示せばよい。
対象に対しては
を示せばよい。
まず、
だから、の対象としては
である。
また、に対して
だから、構造射も同じである。
故に、対象については(☆)が成り立つ。
さらに、の射
に対しても、
が成り立つので、(☆)が成り立つ。
証明
単位・余単位(になるはずの自然変換)を構成できたので、これらが三角等式を満たすことを示す。
とは言ったものの、
①
②
を示すのだが、余単位が同型なので等式が成り立つことがすぐにわかってしまう。*10
よってと
は随伴である。
念のため、もう一度主張を掲げておく:
[定理](反変淡中随伴)
圏の間に
関手を構成でき、
これが反変随伴になる。
左随伴はであり、右随伴は
である。
この随伴の余単位は同型だが、単位(またはその成分)は同型とは限らない。
*1:このときを
の左随伴、
を
の右随伴と呼ぶ。
*2: 組で、
を満たすもの。mをAの乗法、uをAの単位と呼び、これらが明らかな時には(A,m,u)を単にAと書く。
*3: の射であって、モノイド対象の乗法と単位を保存するもの。
*4: 対象は豊穣圏
と
関手
の組
であり、射は
関手
で
を満たすものであるとする。
*5: https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2021/02/01/095156
*6: におけるモノイド対象
の上の加群対象、或いは単に
-加群とは、対象
と構造射と呼ばれる射
の組
であり、特に
と
を満たすもののことである。また、
加群準同型射とは
の射
であり、
を満たすもののことである。加群と加群準同型は圏を成し、特に
が完備であるから(
だから)
豊穣圏にもなる。
*7:によって与えられる(つまり加群の構造射を忘れる)
関手
のことである。淡中の補題から、
と定義してもよい。
*8:加群の構造射による定義とモノイド準同型による定義の同値性についてはメモ7 (https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2021/03/26/014319)においても論じられている。
*9: https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2020/09/22/234153 と同様の議論を一般の豊穣圏について行えばよい。
*10: 少し詳細に見ると、,
,
は同型 などの事実から従う。
メモ7(群環の上の加群と群の表現の対応)
3/8に考えたことのメモです。
以前書いた『淡中再構成(環上の加群)』という記事*1において、「何故 群環/多元環/リー環 の表現は その上の加群を考えるのか」という問いを掲げ、その答えとして「環上の加群の淡中双対があるから」を提示しました。
しかし、「群の表現と群環の上の加群、或いは リー環の表現と普遍包絡環の上の加群は 何故対応するのか」という点については説明できていませんでした。今回の記事ではこれを説明します。
をモノイダル閉圏とし、その上のモノイド対象の成す圏を
とする。
また、を圏とし、
をその対象とする。
[補題]
モノイダル閉圏の対象
を取り、特に
をモノイド対象とする。
このとき、次の2つは同値である:
(1) 射があり、
は
-加群となる。
(2) 射があり、これがモノイド準同型である。
[証明]
テンソルホム随伴( )の
単位を
余単位をとする。
(1)⇒(2)はとし
(2)⇒(1)はとすればよい。
これは噛み砕いて言えばとするのと同じである。 ■
この補題によって、加群の構造射と(適当な)モノイド準同型は等価であることがわかった。
さて、関手があり、これが左随伴
を持つとする。
対象を取れ。
を
上の加群とすると、
は構造射(に対応するモノイド準同型)
in
を備える。
ここで、随伴があるから
が成り立つので、
これは射 in
に対応する。
(例1)
を群の圏
、
をベクトル空間の圏
とせよ。
は多元環の圏
となる。
このとき、は多元環の乗法群(単元群)を取る操作、
は群環を取る操作で与えられる。
上の議論から、群環上の加群と群の表現
が対応することがわかる。
(例2)
をリー環の圏
、
とせよ。
は多元環からリー環を標準的に作る操作、
は普遍包絡環を取る操作で与えられる。
上の議論から、リー環の普遍包絡環の上の加群とリー環の表現が対応することがわかる。
(例3)
を(有限)集合の圏
、
を(有限次元)k-ベクトル空間の圏
とせよ。
は忘却、
は非可換多項式環(自由多元環)を取る操作*2で与えられる。
上の議論から、多項式環上の加群と写像
が対応することがわかる。
*1: https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2020/09/22/234153
*2:或いは、集合から自由モノイドを作りそのモノイド環を取る操作、自由加群を作りそのテンソル代数を取る操作 と言ってもいい
メモ6(中心のモノイド性)
2月半ばに考えて2.20に解決した問題のメモ・解説です。
問題は「モノイダル圏のモノイド対象の中心はまたモノイド対象となるか?なるなら可換なのか?」です。
ネタバレしておくと、肯定的に解決できました。
以下を(完備な)モノイダル圏とし、
をそのモノイド対象とする。
が以下を満たすとき、これを
の中心と呼び
と表すのであった。*1:
①の射
がある。
②は任意の
に対して
を満たす。*2
③と射
があり、これらが②を満たすとき、射
が一意に存在して
を満たす。
また、この中心は
としても構成できるのであった。
ここにとは
のdeloopingと呼ばれる
-豊穣圏であり、
・対象は1つのみ(でありと表される)
・射集合はであり、射の合成はモノイドの乗法で定める
と定義される。
さらに「中心」はが完備ならいつでも存在するのだから、結局「完備モノイダル圏
のモノイド対象
に対して その中心
が存在して これは
の対象であり
として構成される」ということが言える。
ここまではメモ2の復習であるが、ここからメモ3の内容を混じえることで主題の結果を得る。
メモ3*3に拠れば、
-豊穣圏
の対象
に対して
は
のモノイド対象になるのであった。
ここで、を考えると、
これはとなり、
結局に一致し、また
のモノイド対象でなることもわかる。
また、中心の可換性から 中心は可換モノイド対象になることもわかる。
例1)
環の中心は環であり、特に可換環である。
中心に備わっている射は大体包含と思えるから、環の中心は可換な部分環になるとも言える。
例2)
モノイダル圏の中心はモノイダル圏であり、特にがBraidedであればBraided モノイダル圏になる。
*1: https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2021/01/31/232549 を見よ
*2: これはちょっとInformalで、より正確にはtwistに対して[tex:m_A(id_A⊗i)=m_A(t(id_A⊗i) )などと書くべきである。
*3: https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2021/02/01/095156 を見よ。
メモ5(単位元の普遍性)
メモです。
2020年の年末くらいに考えていた「淡中の補題の 単位元の普遍性を用いた別証明」の解説です。
[定理](米田の補題)
を局所小圏、
を関手、
を対象とせよ。
このとき、集合としての同型
がある。
[略証]
この同型はによって与えられ、
これの逆はによって与えられる。
ただし、に対して
とする。
[補題](表現対象の普遍性)
関手が
で表現可能
( )
⇔
の元
があって、
任意のに対して
となる
が一意的に存在する。(☆)
[証明]
米田の補題より、を取って
が同型⇔(☆)
を示せばよい。
は自然変換
であった。
故に、
が同型
⇔の全ての成分が同型
⇔任意の対象に対して
が同型
となる。
だから、
これが同型であること
⇔が一対一対応を与える
⇔各に対して
が定まり、
となる
となる。
なので、これは(☆)と同値である。 ■
さて、モノイドに対する淡中の補題とは以下の主張であった :
[定理](モノイド作用付集合の淡中の補題)
忘却関手は正則加群
で表現可能である。
これは先の補題を用いれば次のように言い換えられる :
[命題]
(集合としての)の元
があり、
任意の-集合
と(集合としての)
の元
に対して
となる
-準同型
が存在する。(☆)
これはより簡潔に書けば
[命題]
をモノイドとする。
このとき、任意の-集合
のその元
に対して
となる
-準同型
が存在する。
となる。
これは実際に成り立ち、を
の単位元とし、
とすればよい。
このときが
-準同型であることと一意的であることは自明であるものとする。
また、この事実は以下のようにも表現(expression)できるだろう :
モノイドの単位元
(或いは単位元を取る射
)は次の意味で普遍的である:
どんな-加群
とその元
(或いは元として
を取る射
)に対しても、射
が一意的に存在し、
を満たす。
なお、このは
で与えられる。
これはモノイドの単位元が或る意味で"普遍的"である(普遍性を持つ)ことを言っていると考えられる。
メモ4(カルテシアン圏と双対対象)
メモです。
2021.02初旬に考察した「剛モノイダルなカルテシアン圏はどのようなものが存在するか」という問に対する答えです。
をカルテシアンモノイダル圏*1とし、さらに剛モノイダル圏であるとする。
対象の双対対象を
と表すことにする。
よく知られた定理*2「剛ならば閉」から、と
は(自然同型を除いて)一致する。
したがって、特にが成り立つ。
つまり、どんな対象も その双対対象は終対象である。
さて、の評価射
と余評価射
を考える。
評価射は射と同じであり、これは
が終対象であることから生える唯一の射である。
余評価射は射と同じであり、これは同型
*3を通じて
の"元"と対応する。
これらを念頭に置いた上で三角等式を見てみよう。
三角等式は
①
②
である。
ここに元を代入して①がどのような条件であるのか確かめたいところだが、一般の圏の対象には元があるとは限らないので、元
の代わりに射
を取り、これを"元"と看做すこととし、これを①に合成する。
②については射をそのまま取れるから、それを代入することにする。
すなわち、として
①'
②'
を考察する。
①'はを用いれば
と書ける。
は唯一の射であったから無視すると、
これは「任意の対象に対して"元"
が存在して、任意の元
に対して
である」と言っていることになる。
つまりということを言っている。
②'も同様に
と書ける。
これについては要するにということを言っており、これは既に見た通りである。
なのだから、これは
ということを言っている。
以上のことから、剛モノイダルなカルテシアンモノイダル圏は単位圏*4しか有り得ないということがわかる。
*1:有限直積を持ち、それをモノイダル積とするモノイダル圏
*2: https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2020/05/31/063027 を見よ。
*3:これはモノイダル閉圏なら成り立つ同型である。
*4:対象はのみで射は
のみの圏。これは
の終対象(したがって単位対象)でもある。
メモ3(自己準同型モノイド)
メモです。
2021.1.27に考察した「自己準同型を集めるとモノイドになるが、これは豊穣圏でも成立するか?」という問題に対する答えをまとめておきます。
をモノイダル圏、
を
-豊穣圏とせよ。
-豊穣圏
には、
Hom集合にあたるものとして
、
射の合成にあたるものとして 、
恒等射(を取ってくる射)にあたるものとして
が定まっており、これらは結合律と単位律を満たすのであった。
このことから 以下の定理がわかる :
[定理]
-豊穣圏
の対象
について、
は
のモノイド対象になる。
なお、乗法はで与えられ、
単位はで与えられる。
例1)
集合の圏を考えよ。
これはモノイダル閉だから自己豊穣、したがっては
-豊穣圏である。
故に、集合の自己写像全体
を考えると、これは合成を乗法としてモノイドになる。
例2)
アーベル群の圏を考えよ。
これはモノイダル閉だから、は
-豊穣圏である。
故に、アーベル群の自己準同型環
は単位的環となる。
これと全く同じことが-加群の圏に於いても言える。
例3)
を完備かつモノイダル閉であるとし、
-豊穣圏
を取れ。
このとき関手圏は
-豊穣圏である。
-関手
を取り、
を考えると、これは
のモノイド対象である。
特に、前層に対する
は
のモノイド対象となる。
(Remark!)
この例に於いてとすると、『淡中再構成(環上の加群)』 https://zangiri.hatenablog.jp/entry/2020/09/22/234153 と内容が一致する。
例4)
を完備かつモノイダル閉とし、
-豊穣圏の成す圏
を考えよ。
このときはモノイダル閉であり、したがって
-豊穣圏となる。
-豊穣圏
に対して
は
のモノイド対象、つまり
-豊穣モノイダル圏になる。
これはとすれば、「自己関手の圏はモノイダル圏になる」と言っているのと同じである。
【追記】
以上では「自己準同型はモノイドを成す」を示したが、この逆「モノイドは自己準同型から与えられる」も示すことができる。
すなわち、をモノイダル圏とし
をそのモノイド対象とせよ。このとき、次のような
豊穣圏
を構成することができる*1 :
対象は唯一つであり(これをと書く)、射集合は
によって与えられる。射の合成がモノイド対象の乗法に、恒等射(を取る射)がモノイド対象の単位に対応している。
この状況に於いて、定義から明らかにモノイド対象は
豊穣圏
内の自己準同型モノイドとして表されている。
つまり、「全てのモノイド対象は自己準同型モノイドとして表される」ということが言える。
また、この議論によって「のモノイド対象と一点*2
豊穣圏は等価である」ということも言える。
例えば、一点圏はモノイドであり、逆もまた然り。