散れども切れぬ備忘録

代数学やその他数学に関することなどをそこはかとなく書きつくる備忘録

メモ1(米田の補題のきもち)

メモです。
2020.12.18にTwitterにて「米田の補題の直感的で雑なお気持ちの理解」をテーマに連続ツイートをしたので、それを一部修正しつつ、はてなブログにもまとめておきます。
「圏、関手、自然変換の定義は知っていて、Hom関手が関手になることもわかっているが、米田の補題の言ってることが掴めない」といった人が想定読者です。



あなた と あなたが属している集団(例えば、同じクラスの人、サークル、数学科の同期、麻雀仲間、バイト先の同僚 等) を思い浮かべて下さい。
これからあなたをXと呼び、あなたが属している集団をCategoryと呼びます。(Categoryと呼ぶと長ったらしいのでCと略します。)

集団Cの中であなたXに対する印象をアンケートで調査することを考えます。
例えば、aさんがあなたに抱く印象(髪は黒色、痩せ型、眼鏡、優しい 等)がアンケート用紙に綴られていきます。
このアンケート用紙はaさんから見たあなたXの印象全体なので、aとXのみに依って定まりますから、(a,X)と書くことにします。圏論を既に知っている人はHom_C(a,X)のことだと思ってください。(a,X)の元はあなたの(1つの)印象です。

アンケート用紙をCに属する人全員から回収しましょう。
これらを元にすると、あなたの容姿や行動や性格が大体復元できるのではないでしょうか。
故に、\{ Hom_C(a,X) \}_{a∈C}はあなた自身Xと同一視してもよいです。
これをHom_C(-,X)と書くことにすれば、XとHom_C(-,X)は大体同じであると言うことができます。
(ただし、Hom_C(-,X)はあなたとは似ているものの、「他人から見たあなたの姿」ですので、多少事実と異なる部分があるかもしれません。
したがって、XとHom_C(-,X)は完全に同じとは限らないことに注意して下さい。)

さて、あなたXをアンケートの結果から復元しようとする操作X\mapsto Hom_C(-,X)のことを米田埋込みと言います。
以上の議論から、
米田埋込みは"大体同型"だ
ということが予想できると思います。
実際その通りで、例えばHOM(Hom_C(-,a),Hom_C(-,b) )≅Hom_C(b,a)が成り立ちます。
(つまり米田埋込みはHom集合間の同型を導きます。これを人は「米田埋込みは充満忠実である」と言います。)

最後に、人を引数に取る(変数とする)ナニカを思い浮かべて下さい(例えば、人望の厚さ、成績、研究の進捗など)。
そのナニカをFと呼びます。
Fにあなたを代入した値F(X)と、
それを他人から見てもらって評価してもらったHOM(Hom_C(-,X),F)は大体同じ(同型)です。

これを人は
米田の補題
と呼びます。